企画展「常民をめぐる人々 ~佐野常民を知る四つのエピソードより~」が現在、佐野常民記念館(佐賀市川副町早津江津)で開催されている。
1881(明治14)年10月16日に送られた、大隈を心配する佐野常民の手紙
明治維新150年に合わせて、佐賀の七賢人の一人、佐野常民と関わりが深かった人物を通じて、幕末の時代を生きた一人の人間として佐野を紹介する。学芸員の近藤晋一郎さんは「日本を世界に認められる国にしようと、日本赤十字社を創設し、ウイーン万博の副総裁の仕事にも奮闘した佐野。彼と共に成功に向かって突き進んだ仲間や生きる指針となった恩師を紹介することで、いち人間としての佐野の姿はもちろん、交友関係の広さも知ってほしかった」と話す。
「目玉展示品」の一つに、佐野常民が大隈重信に宛てた手紙3通の実物を3月11日まで公開する。1881(明治14)年10月16日に送られた1通は、政変で内閣を追放された大隈に対し「とても素晴らしいことをしたのだから気を落とさないで」と慰める言葉に始まり、「あなたに嫌疑がかかっている今、無理に行動を起こすのは危険なので、しばらくは早稲田の邸宅でじっとしていなさい」と、彼の身辺を案じる内容。手紙の最後に「あなたのことを思って、つい長々と書いてしまいました。しかしまだ自分の言いたいことがきちんと伝わっているか心配なので、伝言を託した石丸くん(石丸安世)から詳しいことは聞いてください」(以上、原文を現代語訳)と自分の思いを確実に伝えようと気を回す一面も垣間見える。
近藤さんは「佐野から見た大隈は16歳年下のかわいい後輩。つい親のような気持ちで何かと気に掛けてしまう部分があったのでは」と笑みをこぼす。
「手紙はいずれも、細かな気配りが目立つちょっぴり心配性な『かわいい先輩』としての佐野が垣間見える内容となっている。教科書では感じられない『いち人間』としての佐野を感じられる展示なので、足を運んでほしい」と呼び掛ける。
開館時間は9時~17時。月曜休館(祝日の場合は火曜)。観覧料は大人=300円、小中高生=100円。3月24日まで。