旧佐賀藩主・鍋島家と皇室とのゆかりの品々を紹介する企画展「皇室と鍋島家」が現在、鍋島家伝来の歴史資料・美術工芸品を収蔵する歴史博物館「徴古館」(佐賀市松原2)で開かれている。
5月20日から12月27日まで3期構成で開かれている展示イベント「伝来品でたどる鍋島家の歴史-佐賀藩主から侯爵へ」の1期目の特集展示として、天皇陛下の即位に伴う「令和」への改元と、皇族の朝香宮(あさかのみや)家から鍋島家13代当主・直泰に嫁いだ鍋島紀久子(きくこ)さんの没後30年にちなみ開催された。
鍋島家は皇室との関係が深く、長崎警備などの功績により朝廷から厚い信頼を受けた10代藩主鍋島直正が明治天皇から北海道開拓使長官や大名として最高位の大納言に任命されたほか、11代藩主で侯爵の鍋島直大は宮内省式部長官などの要職を歴任し明治天皇の側近を務め、直大の娘・伊都子(いとこ)は皇族の梨本宮(なしもとのみや)家に嫁いだ。学芸員の池田三紗さんは「皇室との深い関わりの中で拝領してきた御遺物などが数多く鍋島家に残されていて、今回公開することになった」と話す。
明治天皇にまつわる展示品を陳列するコーナーには、実際に使用されたくしやブラシ、鏡、爪磨きなどの化粧道具一式や、鶴の模様が描かれた桑製の棚などの御遺物が並ぶ。現在の東京・永田町にあった鍋島邸への行幸を描いた掛け軸には明治天皇を出迎える直大夫妻の姿を見られるほか、大正天皇の立太子の礼を描写した木版画にも明治天皇の脇で侍立する直大の姿があり、「皇室に真摯(しんし)に仕えたことが見て取れる」と池田さん。
中央のショーケース内には、昭憲皇太后の御遺物として紀久子さんが拝領した、シュンランの花を表した棚飾(たなかざり)や、紀久子さんが婚礼調度品として持参した、3羽の小鳥が羽を休める様子を表した置物などを展示しており、高級品に囲まれた当時の皇族や貴族の華やかな生活をうかがい知ることができる。
池田さんは「ご即位と改元が行われた節目の年に、鍋島家と皇室が結び付きを深めていた時代に思いを致しつつ、今まで一般の目に触れる機会がなかった皇室ゆかりの貴重な品々を鑑賞してもらえれば」と呼び掛ける。
開館時間は9時30分~16時。日曜・祝日休館。入館料は300円(小学生以下無料)。7月20日まで。