「幕末・維新 佐賀の八賢人おもてなし隊」で江藤新平を演じた石井晃一さんの引退記念公演が3月31日、佐賀城本丸歴史館(佐賀市城内2)で行われた。
佐賀の乱をテーマに江藤と島の最期を描いた「さがんもん」の一場面
毎週日曜の1日5回、佐賀の偉人にまつわる歴史寸劇を披露する同隊で石井さんは2014年から約5年間、佐賀藩出身の初代司法卿(現在の法務大臣)・江藤新平を演じてきた。
当日、1874(明治7)年に起こった明治政府に対する士族反乱「佐賀の乱」をテーマに江藤と島義勇の最期を描いた「さがんもん」と、大木喬任・江藤新平・島義勇の3人を中心に、義務教育制度の誕生をコメディータッチに描いた「酒もってこい」の2本の寸劇を上演。石井さんの最後の舞台を見ようと、同隊のファングループ「チーム佐賀藩サポーターズ」や、石井さんが江藤に「就任」した当初から応援してきたファンも集まり、会場の「四の間」に観客が入りきれず、隣の「三の間」や廊下にも立ち見が出た。
後半の公演中には、石井さんとの「最後の共演」を意識したアドリブが入る場面もあり、4回目の公演では、石井さんが、大木喬任を演じる嵯峨賢成(けんせい)さんに「大木、お前のことは評価しとっけん(しているから)、あとは頑張れよ」と役と本人を重ね合わせてエールを送った。最後の公演では、島義勇を演じる谷口文章さんに「島先生、ありがとう」と一言ずつかみしめるように語り掛け、副島種臣を演じる西正(にしまさ)さんがクライマックスに「江藤、お前、よう走ったなあ。ゆっくり休め」と、シナリオに重ね合わせ優しく語り掛けた。
全ての公演終了後には石井さん演じる江藤のファンの家族連れが花束やお菓子を差し入れ、「チーム佐賀藩サポーターズ」や寸劇を以前から見守ってきた「常連」など36人が感謝のメッセージを書いた色紙を送り、石井さんが「ありがとうございます」と笑顔を見せた。
石井さんは「今日の本番が来るまでは緊張で死ぬかと思ったが、江藤新平として演技を始めると一日があっという間だったし、5年間もあっという間だった。江藤は調べれば調べるほど分からないことも多かったが、演じる中で少しでも近づくことができたとしたら幸せ」と振り返る。「『おもてなし隊』で一生にない経験ができてよかった。私は卒業するが、4月以降も『おもてなし隊』の寸劇は続くので、これからも見守ってくれるとうれしい」とも。