佐賀県が3月26日、長年、地域の方から愛され、親しまれてきた飲食店の味を後世に残したいという店を紹介する「後世に残したい店」を公開した。
県産業政策課の萩尾知明さんによると、県では2015(平成27)年度から県内中小企業の事業承継支援に取り組んでおり、国が運営する支援機関「佐賀県事業承継・引継ぎ支援センター」(佐賀市白山)などと連携し、さまざまな取り組みを行っている。2018(平成30)年から3年かけて県内の事業者約1万社を訪問し、現状や課題を把握する診断を行ったところ、3分の1の事業者は後継者が決まっており、3分の1は候補がいるが「未定」、3分の1が候補もなく「不在」という回答だったという。
今回、住民が直接接し、話題になることが多い身近な業種で、「自分が好きだった店が閉店していた」経験することもある飲食店に特化した取り組みと企画。昨年11月~12月に推薦募集し、約320軒の飲食店情報が集まった。店舗への事前取材を通じて、「店主が50代以上」「20年以上営業」「後継者が未定・不在」という条件で候補を絞り、委員会を通じて店舗を選定。今年2月に各店舗への取材を行い、認定店を紹介するウェブサイトと店舗などへの配布する小冊子を制作した。
公開した認定店舗は45店。佐賀市24店舗、神埼市3店舗、唐津市3店舗、伊万里市3店舗など。ウェブサイトは、「店の歴史」「メニューのエピソード」「店の今後」で構成。加えて、飲食店の事業承継事例として「味彩さざんか あいちゃん農園」(神埼郡吉野ヶ里町松隈)、「岩屋うどん」(神埼市脊振町広滝)を紹介している。
萩尾さんは「新型コロナウイルス感染症の影響で、飲食店でも厳しい状況が続く中、事業をやめられるところが増えるのではと感じている。今回の取り組みを通じて、飲食業に関係なく事業継承に関心を持ったという方もおり、今後、他の業種にもどのようなアプローチで取り組みを進めていくかを商工団体などと一緒に考えていきたい」と話す。