農業技術ベンチャー「タベテク」(福岡県春日市)が現在、佐賀市内のみかん生産者の貯蔵倉庫やJAの貯蔵倉庫で、同社が開発したプラズマ鮮度保持装置を使い、果物の腐敗防止の実証実験を行っている。
農業技術ベンチャー「タベテク」が開発した果物の腐敗を防止する「プラズマ装置」
同社の田苗眞代社長によると、世界で生産される野菜や果物のうち約45%が生産と貯蔵段階で廃棄されているという。九州で栽培される貯蔵みかんは11月~12月に収穫し、一部品種を1月~3月まで専用の貯蔵倉庫で熟成させるが、近年の温暖化でみかんの傷みが早まり、味が落ちることから、完全に熟成しないまま、早い時期に出荷を終わらせるケースも起きている。貯蔵倉庫の温度を下げる冷却装置は高額で、電気代もかかり、農家にとっては導入のハードルが高いという。
同社では生産農家の抱える課題を新技術で解決しようと2018(平成30)年、プラズマガスでみかんを刺激し抗酸化物質の生成を促す「プラズマ装置」を開発した。装置の大きさは、縦・横25センチ・高さ15センチ。一般家庭用の100V電源を使えるため、電気代の負担が少なく薬剤も使用しないため経済的という。モニター調査では、これまでよりカビが生えてしまうみかんの数を3分の1に減らせたという。
昨年12月から佐賀県内にあるJAのかんきつ貯蔵倉庫で実証実験を行い、1月からはみかん生産を手掛ける「石橋果樹園」(佐賀市大和町久留間)で同様の実験を行い、ビジネスモデル検証と腐敗果調査を行っている。現在、実証実験でのプラズマ装置の製作や設置、調査にかかわる人員の確保、実験用に使うみかんの買い上げ費用を賄う資金支援者をクラウドファンディングで募集している。
田苗社長は「実証実験で装置の効果を確認してもらい、貯蔵に困っている多くの農家に活用してもらいたいと思っている。生産者は遠方や海外にも安定して売れることを望んでおり、例えばこれまで空輸していた農産物を『プラズマ装置』を使い、船便でも輸送できるようにして、ロスの削減と輸送コストの削減にもつなげていきたい」と意欲を見せる。