「Saga Conversation Community」で進行役を務めるスティーブン・ニューエンさん
隔週金曜日の夕方、佐賀県国際交流プラザ(佐賀市白山2)の会議室で、市民と県内在住の外国人が英会話で交流を深めるサークル「Saga Conversation Community(サガ・カンバセーション・コミュニティー)」が昨年8月から開催されている。サークルを立ち上げたのは、佐賀の中学校・高校でALT(外国語指導助手)として教壇に立つ米・カリフォルニア州出身のスティーブン・ニューエンさんだ。
スティーブンさんは進行役として、さまざまな国籍の参加者と英語や日本語を交えて会話やゲームを楽しみ、終始笑顔が溢れる雰囲気を作り上げている。初来日から4年が過ぎ、佐賀に根付いて国際交流活動に勤しむスティーブンさんのこれまでの軌跡を追った。
「Saga Conversation Community」の参加者とゲームに興じるスティーブンさん
1995(平成7)年1月25日にカリフォルニア州で生まれたスティーブンさんは、両親がベトナム出身の移民2世で、家庭内はベトナム語、外では英語を話すという「2つの国の文化がミックスした生活」(スティーブンさん)を送ってきた。幼少時代から日本の漫画やアニメに触れ、日本のポップカルチャーに関心を深め、高校時代にはコスプレを楽しむようになり、ロサンゼルスで毎年開催されるアニメコンベンション「アニメ・エキスポ」にも足を運んでいたという。
南カリフォルニア大学(ロサンゼルス市)に進学し、東アジア言語・文化学を専攻すると、日本文化について独自の研究を始めた。日本人が着るTシャツの中で、短い英語の文が書かれているその英語に意味をなさないことが多いという点に疑問をもち、調査を行ったことがあるスティーブンさんは、「たとえ意味が通らなくとも文字のカッコよさを大切にする日本人のファッション感覚がわかり、大変興味深かった」と振り返る。
大学では学内サークル「日本人留学生サポーター」を設立し、日本人留学生との交流イベントを企画したり、ロサンゼルス市内や郊外への観光ツアーを組んだり、ハロウィンやクリスマスなどにはパーティーを催したりして親交を深めた。
「日本人留学生サポーター」メンバーと日本人留学生との集合写真
スティーブンさんは2015年6月、南カリフォルニア大学と協力協定を結んでいる明治大学(東京都)の短期留学生受入れプログラムで初来日。約2週間の滞在中、明治大学生と日本と米国の歴史や文化についてディスカッションしたり、都内を観光したり、京都、大阪にも訪問した。2016年にはインターン生として慶應義塾ニューヨーク学院(ニューヨーク市)の生徒に英語の授業を行う機会を得たことで、子どもたちに教えることの楽しさに気づき、日本で英語講師になる夢が湧いてきたという。
その後スティーブンさんは、一般財団法人自治体国際化協会が実施する、語学指導等を行う外国青年を日本に招致する事業「The Japan Exchange and Teaching Programme(ザ・ジャパン・エクスチェンジ・アンド・ティーチング・プログラム、略称=JETプログラム)」にも参加し、大学を卒業。ALTとして5年間の日本への赴任が決まったことから、今までに行ったことのない場所として、佐賀を選んだ。
2017年7月、初めて佐賀を訪れたスティーブンさんは「佐賀空港に降り立ったとき、一面に広がる田園の景色にまず驚いた。日本の大都市にはない日本らしい緑豊かな自然に溢れた佐賀の風景をすぐに気に入った」と振り返った。さらに「町並みが穏やかで快適に生活できることに加え、『さが榮の国まつり』や『佐賀インターナショナルバルーンフェスタ』など興味深いイベントが多く、とても魅力的」といい、「これまでに『さが桜マラソン』や『鹿島ガタリンピック』などのスポーツイベントにも出場して、地元の人たちとの交流を楽しんできた」と佐賀での充実ぶりを語る。
「さが桜マラソン」に出場したスティーブンさん(右)
また、佐賀の人は外国人にやさしく、フレンドリーに接してくれる土地柄と評価する一方、外国人と地元の人が直接交流する機会が少ないと感じていたという。「ならば自分が橋渡し役になろう」と、2018年8月に「Saga Conversation Community」を初開催。月2回のペースで続け、8月で1年を迎えた。英語を話す機会がほしい日本人と、日本語を話して地元の人とふれあいたい外国人が集う小さなコミュニティーとして、今までに、中国、インド、ベトナムなどアジア各国や、米国、カナダ、ドイツなど10カ国以上の外国人が参加した。
6月21日に主催した国際交流パーティー「Japanese and English Conversation Cafe(ジャパニーズ・アンド・イングリッシュ・カンヴァセイション・カフェ)」の集合写真
スティーブンさんは「5年間の滞在期間のうちの2年があっという間に過ぎた。これまでの佐賀での生活で強く印象に残るのは『人とのつながり』。小さな町だからこそ人と人との距離が近く、たくさんの素晴らしい人たちが私を家族のように接してくれた。佐賀は私にとっての日本の『ふるさと』になった」と笑顔を見せる。
「素敵な経験をたくさんさせてくれた佐賀のみなさんとこれからも一緒に成長したい」というスティーブンさんはすっかり「さがんもん」として佐賀に溶け込み、市民と外国人との国際交流の一翼をこれからも担っていくという。
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Saga Conversation Community