佐賀城下に残る唯一の造り酒屋跡とされる「旧枝梅酒造」(佐賀市八戸1)の敷地内に、喫茶スペース「えだうめカフェ」がオープンして2カ月がたった。
幕末期の文献「佐嘉城下町竈帳(かまどちょう)」によると、枝梅酒造は1854年に造り酒屋を始め、2009年の操業停止以降は地元「八戸(やえ)町自治会」などの保存活動を経て佐賀市が跡地の一部を買収、建物を改修し、長崎街道西側の新たな歴史文化の拠点を作った。
母屋部分に入居する「とっぺん」(鍋島町八戸)会長の武廣正純(たけひろまさずみ)さんは、SNSを通じてこの建物を訪れた市民の憩いの場を作りたいと、昨年11月に開店した食事所「酒の蔵えん」に続き、母屋の一室を改装したカフェを昨年12月1日に開いた。
カフェには武廣さんの知人らが寄贈した約500冊の本が並び、誰でも自由に読むことができる。佐賀の歴史や偉人の本が多く、熱心に目を通す歴史ファンもいるという。家族で楽しめる子ども向けの絵本もそろえる。カフェスタッフの井上愛梨さんは「ソファもゆったりしていて、コーヒー片手にくつろぎながら読書やトークができる」と話す。
開店当初は、コーヒー焙煎(ばいせん)所「Have a nice coffee(ハヴ・ア・ナイス・コーヒー)」(鍋島町八戸溝)のコーヒー(300円)と手作りパン店「Petit Bois REPOS (プチボアルポ)」(八戸2)のパン、焼き菓子(150円~)のみを販売し、「ひっそりとしていた」(武廣さん)というが、1月に「土井羊羹(ようかん)本舗」(小城市牛津町下砥川)の「宿場ようかん」(600円)を追加。
今月から金曜限定で、「基山商店」(三養基郡基山町宮浦)、「東鶴(あずまつる)酒造」(多久市東多久町別府)、「矢野酒造」(鹿島市高津原新町)の酒かすを使った天然酵母パン(各350円)を販売する。酒蔵で使用していた酒絞り袋を再利用したオリジナルバッグ(1万8,360円~)など雑貨も販売する。
武廣さんは「商品が増え、徐々に『カフェ』の体裁も整ってきた。これからはイベントも積極的に開催したい。気軽に足を運んでもらい、歴史ある建物の風情を楽しんでほしい」と呼び掛ける。
営業時間は10時~18時。月曜定休。