歴史顕彰劇団「はがくれ」の演劇「神々の『志』~北と南 神様と呼ばれた二人の男~」が12月15日、佐賀城本丸歴史館(佐賀市城内2)で上演された。
幕末の佐賀藩出身で当時未開の地であった蝦夷地(現在の北海道)を探検し、札幌の開拓に奔走した「北海道開拓の父」島義勇と、佐賀藩出身で明治時代中期に沖縄で那覇区長と島尻郡長を兼任し、硫黄鳥島の噴火の際には島民全員を久米島へ無事に移住させ、島民に「神」と慕われた11代齋藤用之助の活躍を描く同作。
同劇団プロデューサーの浦川忠敬さんは「(11代齋藤用之助のひ孫に当たる)14代齋藤用之助さんから2016年に『11代齋藤用之助顕彰会の会員のために演劇作品を作ってほしい』と依頼を受け、知人で演劇の脚本を書いている谷口文章さんに話を持ち掛けた。完成した脚本を顕彰会メンバーに持ち込むと皆涙を流して喜んでくれた。実際に演じてみると好評で、久米島の小学校など多くの場所で披露した」と振り返る。
現在同館で開催する、島義勇や11代齋藤用之助の功績を紹介する特別展「肥前さが幕末維新の『志』-北へ南へ、佐賀人が道を拓いた-」に合わせ、約1年ぶりに再演の話が決まった。より質のいい演目を作りたいと2017年5月に新たに劇団を立ち上げ、今回の上演に臨んだ。
当日の上演会場となった同館の「一の間」と「二の間」には、久米島の町長や中学生をはじめ地元の観客も集まり、2人の雄姿を見守った。物語は島の北海道開拓を描く前半と11代用之助の久米島での活躍を描く2部構成。物語が進むにしたがって廊下に立ち見客も出始め、上演後は集まった観客による拍手がしばらく鳴りやまなかった。第14代齋藤用之助さんは「演目の中に11代用之助の思い上が全て詰まっているように思われ、とても感激した。ぜひ久米島にも来て上演してほしい」と話す。
浦川さんは「この演目が彼ら2人の思いや考えを学ぶとともに、『もし自分が彼らの立場だったら』と想像して自分の生きる指針を見つけるきっかけになれば。佐賀から日本や世界が良くなる一助として、子どもたちがこの演目を見ることが増えるといい」と話す。
島義勇を演じた嵯峨賢成さんは「当時の佐賀の人に共通する『自分以外の誰かのために』という思い。今回の上演をきっかけにその精神を県内の人に誇りに思ってもらいたいし、県外の人にも知ってもらいたい」と話す。
第11代齋藤用之助を演じ、脚本を担当した谷口文章さんは「観客に喜んでもらえたのが空気を通してひしひしと伝わりうれしかった。今後は、佐賀をはじめ久米島でも上演を重ね、11代用之助のことを正しく知ってもらえるきっかけにしたい」と笑顔を見せる。