オランダ人アーティストのヴィクター・エンバースさんが市民と共同で制作した刺しゅう作品の展示会が現在、佐賀とオランダの人材交流施設「オランダハウス」(佐賀市呉服元町)で開かれている。
オランダの首都・アムステルダムで芸術活動をしてきたエンバースさんは、今年3月から開催する「肥前さが幕末維新博覧会」に合わせオープンした同施設で、オランダのアーティストが佐賀に滞在し創作活動を行う「アーティスト・イン・レジデンス」の一環として今年8月に招かれ、今月まで滞在している。
エンバースさんは、かつて日本人が手掛けた刺しゅうの高い芸術性に魅了されたことを思い出し、日本の文化や美しい自然を表現する刺しゅうアートを市民と創り上げようと思い立ったという。
刺しゅうアート用に準備した縦1.5メートル・横5メートルの布地に糸を縫い始めた9月上旬。「このプロジェクトにどれだけの人が参加してもらえるか不安だった」というエンバースさんだったが、施設スタッフや佐賀県庁職員らの参加に始まり、来場客やプロジェクトのことを聞いた市民も加わり、500人以上が参加。バルーンやノリ網、佐賀の牛など、地元らしい絵柄の刺しゅうアートが完成した。
エンバースさんは「参加者との会話を通して、日本の文化や国民性を理解し、作品に生かすことができた。佐賀の市街地で見た日本の古い建造物にも、世界で類を見ない独特の色彩があることに気づき、感銘を受けた。展示中は会場で多くの人と語りたい。佐賀で実感した『アートは世界中の人の心をひとつにする』というメッセージを、この作品から感じてほしい」と話す。「作品は母国でも発表する予定だが、いずれ佐賀県に寄贈したい」とも。
開館時間は10時30分~18時30分。入場無料。11月9日まで。