松原神社参道の新馬場通り沿いにある「旧松川屋旅館」(佐賀市松原3)が展開する建物再活用プロジェクトで現在、畳替え・照明交換など改装費用の支援募集している。
「松川屋再生プロジェクト」事務局長でコミュニティーラジオ局「えびすFM」社長の池田眞由美さんによると、1853(嘉永6)年創業の旅館「松川屋」は1899(明治32)年7月、文豪・森?外が宿泊したことを自身の作品「小倉日記」で明かしているほか、1957(昭和32)年には松本清張原作の映画「張込み」で撮影スタッフが約1カ月間宿泊したことで知られる重要建造物という。その後、おかみが亡くなり2011(平成23)年に廃業。現在は建物が空き家となっている。
池田さんによると、同建物は昭和初期から戦後にかけて増改築が施されているが、基礎の骨組みは創建当時のままといい、廊下の照明、木枠の窓と凹凸のガラス、各部屋にあるしっくいの壁、らん間や床の間、羽目殺しの障子、鏡台など家具調度品は部屋ごとにオーダーメードされた物で、今も昭和の風情を残しているという。
「古くても、愛情かけて大事にされてきたことが分かる物ばかりで、人々の息づかいが感じられる」と池田さん。同建物を生かす道を探り2018(平成30)年、一級建築士、会社経営者、学生など地元住民有志で構成する「松川屋再生プロジェクト」を設立した。同プロジェクトではこれまで、縁側のレールや調度品の修理、壁のしっくい塗りや障子張り替えなどを行うワークショップ、座禅会、「松川屋」をテーマにしたオンラインサロン開催などの活動に取り組んできた。
同プロジェクトでは、建物を企業の福利厚生や個人のレンタルオフィスとして貸し出し、活用することで維持管理費を捻出しようと、水道やトイレなどの水回りを使えるようにしたが、約10畳ある部屋6部屋と約40畳の大広間の畳替え、部屋の照明をLEDに交換する費用が足りないことから、改装費用の180万円をクラウドファンドで調達しようと支援者募集に踏み切った。
クラウドファンドは、期限までに目標金額に到達できない場合、支援金が支援者に全額返金される「オール・オア・ナッシング」方式で昨年12月1日から募集開始。80人以上から支援を受け、期限3日前の1月12日に目標金額を達成した。
池田さんは「松川屋が建物としてだけでなく、人と人が出会い、つながり、行動を起こす拠点になってほしいと思っている。新馬場通りが元気になることは佐賀中心市街のにぎわいにつながると思っている。この地に暮らすシニアと何か始めたいという若者たちが、まちなかで出会い、新しい物語がつづられるきっかけになれば」と話す。
クラウドファンド支援募集は1月15日23時まで行う。