学生時代の思い出の味のちゃんぽんを描いた、佐賀県上峰町在住の衞藤拡典(えとうひろのり)さんの油絵が11月18日、「第69回佐賀県美術展覧会(県展)」で佐賀県知事賞に選ばれた。
「池田屋」のちゃんぽん(720円)と「県展」で購入できるポストカード(50円)
佐賀県立美術館(佐賀市城内1)で11月23日から開催している同展。佐賀大学近くにある「池田屋」(佐賀市赤松町)のちゃんぽんを描いた衞藤さんの油絵「池田屋」は、横幅約1.6メートルの100号サイズ・キャンバスに、いっぱいのもやしをのせた具とスープをリアルに描いている。
貧乏学生だった衞藤さんは、当時1杯500円だった池田屋のちゃんぽんを月に一度のご褒美として食べていたという。社会人になってからは店に通う機会が減り、3年前に久しぶりに店を訪ねた際、同店が移転したタイミングだったため、閉まったシャッターを見て「閉店した」と勘違いした衞藤さんは「どうしてあのちゃんぽんを絵に描いておかなかったんだ」と後悔したという。初代店主の池田信宏さんに連絡を取り、「ちゃんぽんの絵を描きたい」と依頼。2カ月かけて描き上げた。池田さんは「学生時代にちゃんぽんを食べていた人が社会人になって来店することはよくあるが『絵を描きたい』と言ってきた人は初めて。美術館で絵を見た後、『食べたくなったから来た』というお客さんも多く、反響に驚いている」と話す。
美術館での展示終了後、絵は店内に飾る予定という。衞藤さんは「もやしのリアルさを出すために家で実際にゆでたり、スープに浮かぶ油だけを見に来たりしたこともあった。私にとって『池田屋』のちゃんぽんは学生時代を支えた思い出の味。ちゃんぽん同様、この絵も長く親しんでもらえれば」と話す。
「県展」開催時間は9時30分~18時。入場料は、一般=300円、学生=200円ほか。12月1日まで。