NHK大河ドラマ「いだてん」で大隈重信を演じた俳優の平泉成さんが1月19日、大隈ゆかりの地3カ所を「聖地巡礼」した。
1月20日に開催した「大河クロストーク」に合わせて「ほぼ初めて」佐賀を訪れたという平泉さんに、教科書だけでは分からない「一人の人間としての大隈」の姿を知ってもらおうと佐賀県が企画した。佐賀県庁企画課の円城寺雄介さんは「大隈が当時使用した義足や数多くの国民を引きつけた演説の肉声、さらには大隈が若いころの佐賀藩の雰囲気などを実際に佐賀で感じてほしかった」と話す。
平泉さんが最初に訪れたのは佐賀城本丸歴史館(佐賀市城内2)。同館学芸員の藤生京子さんの案内で、城内を観覧した。「一の間」では実際に直正が座っていた場所に座ったほか、藤生さんの考察をもとに円城寺さんが「藩の行事でおそらく大隈家当主が座ることができた場所」として、「三の間」と「二の間」の境目あたりに座ると、その距離感に「こんなに藩主から遠い位置から後の総理大臣になったのか」と感慨深げな表情を見せた。同館を建築の視点から解説する「御三家座」では当時実際に使われた組み木の仕組みをパズル形式で学んだほか、「御料理間」で並べて展示されていた大隈と江藤の写真を見て、「大河ドラマ『西郷どん』で江藤新平役を演じた迫田孝也さんと出演するクロストークと)一緒(の並び)だ」と笑みをこぼした。
平泉さんが「佐賀城には城絵師による壁の装飾はなかったのですか」と問い掛けると、藤生さんが「その部分まで目を向ける人は少ないのに、よく気づかれましたね」と驚き、資料が現存していないものは再現しないというポリシーであえて壁の装飾はしていないことを解説。平泉さんが「シンプルで落ち着いた雰囲気が、他の城と一味違って新鮮でいい」と話す一幕もあった。
大隈の遺髪を納める龍泰寺(赤松町)を訪ねた平泉さんは、、「自分はちゃんと演じられていたか」という思いを胸に、撮影終了の報告も兼ね、墓前に手を合わせた。2017年の熊本地震の際に石畳や墓石の一部に入ったという亀裂を見て、佐賀でも発生した地震被害に思いを寄せた。
大隈重信記念館(水ケ江2)では敷地内の大隈の生家を訪問し、まだ幼名の「八太郎」として呼ばれていた頃の大隈に思いをはせた。「実際に大隈も座っていたかもしれない」と縁側に腰掛け同館の江口正明館長と晩年の大隈に関する逸話を話題に盛り上がったほか、2階の勉強部屋では「居眠りをしたときに頭をぶつけて目が覚めるように」と大隈の母・三井子が取り付けたとされる「ごっつん柱」にも触れた。江口館長の案内で1階と2階の常設展示を観覧。スタッフが思わず「こんなに一生懸命見てくださるなんて」とこぼすほど、一つ一つの展示品やパネルに時間をかけて目を通したほか1階展示室で流れている演説中の大隈の肉声にも耳を澄ませた。
平泉さんは「大隈は政治家としても教育者としても、当時としてはかなり異色のタイプだったことが分かった。女子教育の普及や男女の地位の平等化など、現在にもつながる問題にも目を向けていたことにはびっくり。そのような視点があったからこそ、佐賀から遠く離れた東京でも活躍できたのだと感じた」と話す。
大河ドラマ「いだてん」は、NHK総合テレビで日曜20時~20時45分放送。