佐賀市在住の深川勝郎さんが7月15日、文芸社(東京都新宿区)が行う「出版費用0円キャンペーン」で自伝的エッセー集4作品が大賞を受賞し、その中の1作「佐賀駅上りホーム」が刊行された。
受賞したのは同著に加え「ハロー&グッバイ ストックトン」、「ふれあいの旅路」「ふるさと」の4作品。今回出版した「佐賀駅上りホーム」は、著者の幼年時代から少年時代をつづった回顧録の中に昭和の佐賀の原風景が蘇る作品。幼年時代から渡米を決断した22歳の深川さんが故郷の駅から旅立つまでの素朴な日常の一コマ一コマを温かくたどる。
深川さんによると「緩急のメリハリの効いた筆が再現する鮮やかな情景は読み手を時に笑わせ、時に涙を催させ、誰もが心の中に持っている郷愁を掻き立てて止まない。懐かしさの中に入り混じる恥かしさや後悔、すまなさ、惨めさといったものが自ずと共感を喚起するに違いない。単に記憶を蘇らせるというより、気持ちや感覚まで再現してしまうあたりが巧みである」と講評を受けたという。
表紙は、1971(昭和46)年の旧佐賀駅で、東京の大学を休学し渡米する深川さんを見送る父親の姿を、高校時代の同級生が描いた。同じころ、就職のために和歌山へ出発する弟を同じホームで涙ながらに見送った思い出を重ね合わせながら描いたという。
深川さんは「中学の時の担任の先生が交換日記や作文を通じて文章を書くのは楽しいことだと教えてくれた。昭和の同じ時代を過ごした世代には懐かしんでもらえるとうれしい、その時代を知らない若い人たちにも少年期の学校での出来事や家族への思いなどが共感してもらえると思う」と話す。同書の印税はすべて「国境なき医師団」に寄付するという。
価格は1,296円。全国の主要書店、文芸社ホームページなどで販売する。