花王株式会社(社長・長谷部佳宏)スキンケア研究所・バイオ・マテリアルサイエンス研究所は、独自の加工法で製造し、ロズマリン酸の純度を高めたローズマリーエキス 「スマートガーデンローズマリーエキス」が、角化健全化効果に優れることを見いだしました。
今回の研究成果は、日本薬学会第144年会(2024年3月28~31日・神奈川県)、および第2回日本化粧品技術者会学術大会(2024年11月18~20日・兵庫県)にて発表しました。
背景
花王は、佐賀県佐賀市の清掃工場から排出されるCO2を回収・精製できる設備を利用し、環境負荷を低減した独自の植物工場「SMART GARDEN(スマートガーデン)」を構築し、ローズマリーとローマカミツレの水耕栽培を行っています。スマートガーデンでは、栽培条件や収穫タイミングを高度に管理することで、植物の生育促進や植物に含まれる活性成分量の増量も実現しています。さらに、栽培した植物からエキスの抽出を行う過程では、エキス中の不純物を取り除く加工技術を開発し、活性成分の純度の高い植物エキス「スマートガーデンローズマリーエキス」の生産を可能にしました*1。
植物エキスは、さまざまな効果が期待されることから多くの製品に使用されています。今回花王は、このエキスについて、有効性を評価しました。
*1 花王ニュースリリース 2024年3月14日 回収したCO2を活用した植物工場「SMART GARDEN」を構築
スマートガーデンローズマリーエキスの角化健全化効果
遺伝子の網羅的発現解析
正常ヒト表皮角化細胞にスマートガーデンローズマリーエキスを添加し、皮膚機能に関連する191種の遺伝子の発現変化を評価しました。その結果、特に角化機能に関わる遺伝子の発現増加が認められました。
角化関連タンパク質への影響比較
正常ヒト表皮角化細胞にスマートガーデンローズマリーエキスと従来のローズマリーエキスを添加し、角化に関わるタンパク質として知られているトランスグルタミナーゼ1(TGM1)、およびインボルクリン(IVL)の産生量を比較しました。その結果、スマートガーデンローズマリーエキスの方が、TGM1 と IVLの産生量を増加させることが明らかとなりました(図1)。
角層構造への影響
角層の構造を強固にする角層細胞の膜状構造(CE:コーニファイドエンベローブ)の形成について検証しました。正常ヒト表皮角化細胞にスマートガーデンローズマリーエキスと従来のローズマリーエキスを添加し、蛍光染色を行い、GP値(膜パッキング状態の指標)を算出してCEの成熟度を評価しました。
蛍光像の観察から、スマートガーデンローズマリーエキスを添加した細胞は、従来エキスよりも細胞が大きくなり、細胞膜に相当する外側部分が明瞭である様子が確認できました。さらにGP値も高いことから、スマートガーデンローズマリーエキスを添加した細胞でCEの成熟度が高いことが示されました(図2)。
以上の結果から、スマートガーデンローズマリーエキスは、従来のローズマリーエキスよりも高い角化健全化効果を持つことが示唆されました。
ロズマリン酸の角化健全化効果を阻害する成分の発見
従来のローズマリーエキスには、ロズマリン酸以外にも多くの成分が含まれます。花王はこれに着目し、従来エキスに含まれるロズマリン酸以外の成分をそれぞれロズマリン酸とともに正常ヒト表皮角化細胞に添加し、角化への影響を評価しました。その結果、ベツリン酸をあわせて添加すると、ロズマリン酸によるTGM1の発現増加が抑制されることを見いだしました。
スマートガーデンローズマリーエキスは、純度を向上させるプロセスでロズマリン酸の働きを阻害するベツリン酸を低減できているため、角化健全化効果が高くなっていることが示されました。
まとめ
今回花王は、ロズマリン酸の純度を高めたスマートガーデンローズマリーエキスを開発し、そのエキスに従来のローズマリーエキスよりも高い角化健全化効果を見いだしました。その効果は、含有成分のひとつであるベツリン酸が少ないことが理由である可能性が考えられます。
花王は、環境に配慮した植物の栽培から、高機能エキスの生産までの一連の取り組みを通じて、生活者の満足感を高める製品開発に、引き続き取り組んでいきます。