プレスリリース

土壌微生物診断により有機肥料の優位性を化学肥料との比較で証明

リリース発行企業:合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会

情報提供:

合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会(SDB研)(本社:佐賀県伊万里市、代表:橋本 好弘)は、有機肥料と化学肥料の比較実験を行い、その結果、有機肥料が土の免疫力と根の吸肥力の面で優位性があることを示した。これまで有機肥料は土壌微生物が分解し、病害に強くなる、根張りが良くなるなどのメリットがあるが、化学肥料と比較して数値化されることはなかった。今回数値化されたことで、肥料メーカーは生産者により判り易く、明確な説明を行えるようになり、生産者も両者の明確な違いを認識できるようになる。農林水産省の「みどりの食糧システム戦略」の推進する減農薬・減化学肥料を実現するための一助となることが期待される。 6月16日(日)10時より、日本土壌微生物学会(名古屋大学で開催)にて本成果を発表した。アカデミアのみならず企業や農林水産省の担当者など、当学会の参加人数は昨年度から倍増 し、環境負荷軽減・減農薬・減化学肥料の取組みへの関心から、本発表に対しても多くの期待と激励の声を得られた。


1.背景
地球環境の維持と持続可能な食糧生産のために、農林水産省は、減農薬・減化学肥料と有機農業への転換を推進している。しかし、化学肥料の代替と期待される有機肥料は、その普及に時間がかかっている。その一因と考えられているのが、有機肥料の説明の難しさにある。多くの資材の優位性(病害に強い事や根張りが良い事など)についての説明には、具体性が乏しく、資材の正当な評価を得ることに苦慮している。この事が、生産者現場における有機肥料の理解が進まず、普及を遅らせる一因となっている。有機肥料の普及推進のためには、化学肥料と比較してその優位性を判りやすく明確に示すことが求められている。


2.実験概要
2021年から2023年までの3年間、佐賀県伊万里市のSDB研の試験圃場において、複数の有機肥料(資材)と化学肥料の比較試験を行った。
今回、ホウレンソウとスイートコーンを用いて、5回の栽培試験を行い、結果に再現性のある事が確認された事例を抽出。
評価項目は、各試験ごとに異なり、生育・収量・作物体への肥料吸収量・土壌理化学性・土壌微生物性など多岐にわたるが、今回の発表では、有機肥料の優位性が示された「土の免疫力*」と「根の吸肥力**」を中心に報告した。
3.実験結果
複数の有機資材を用いた試験で、化学肥料との優位性を土の免疫力と根の吸肥力で確認する事が出来た。
O資材とY資材の土の免疫力は、化学肥料と比較して初期・中期・後期共に高く推移した。
Y資材/スイートコーンの根の吸肥力は、化学肥料と比較して中期を除き高く推移した。
G資材の根の吸肥力は、化学肥料と比較して初期・中期・後期共に高く推移した。
Y資材の根の吸肥力は、春作・秋作共に高かった。

4.利用した評価技術
 4ー1.土の免疫力 ≒ 土壌病害抑止力 病気に強い健康な土になった事を示す
土づくりがしっかりできていると、元気な土壌微生物達が病原菌を排除(抑止)してくれる。一方、土づくりができていない、土壌微生物達が弱っている土では、病原菌の侵入を許してしまう。健康で元気な人(=免疫力の高い人)は、風邪にかかりにくく、病気がちで、体調が悪い、(=免疫力が低下している人)は風邪にかかりやすく。
良質な有機質肥料の施用により、土壌微生物たちが元気で活発になると自然と病気に強い土になる。しかし、品質が不安定だったり、完熟していない有機質資材・肥料が施用されると病害虫を呼び寄せてしまう事もある。よって資材を事前に評価して、土づくりに有効で病害虫を抑制することができる資材なのか、病害虫の増殖を助長する様な資材なのかを確かめておくことが大切だ。


 4-2. 根の吸肥力 ≒ 根圏微生物活性 根張りが良くなり、少ない肥料を効率よく吸収できる事を示す
化学肥料の場合には、微生物分解なしでも植物は肥料を吸収できる。その為、根はあまり発達せず、主根中心のツルっとした根になる。
一方、有機質肥料(資材)の場合には、土壌微生物により分解された後、肥料成分が根から吸収される。その為、微細な毛細根が発達し、そこに微生物達が増殖して有機質肥料を分解し、植物の根と協力関係を構築する。根を洗って、それでも根にしっかり張り付いている根圏微生物の呼吸活性を測定する事により、根圏微生物活性(≒ 根の吸肥力)が判る。この活性が高いほど、水や肥料を吸い上げる力(吸肥力)も強く、足腰のしっかりした元気な植物だと考えられる。


5.多様な有機肥料・資材の選抜にも利用が期待される
地球環境の保全・持続可能な食糧生産・環境保全といった取り組みを行う上で、化学農薬・化学肥料の削減は、最初の一歩となる。そのため化学肥料の代替となる有機肥料の普及を強力に推進していく必要がある。しかし、有機肥料には、多様な材料が使われ、腐熟化の方法も様々であるため、品質も様々である。安定して高品質な資材から品質の振れが大きい粗悪な資材まで、玉石混交となっている。肥料登録によって肥料効果と毒性のない事は担保されているものの、資材メーカーの営業担当者にも、資材の優位性を充分に説明できる人は少なく、生産現場では有機肥料の使用に不安を感じている生産者も多いのが現状である。少量・多品種の有機肥料・資材は、地域ごとに優良な資材の選抜を進めていく必要もある。玉石混交の資材の中から、迅速に優位性を示す資材を選抜する為にも、本技術の活用が期待されている。

6.合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会(SDB研)について
種苗会社(サカタのタネ)在職時に、バイオセンサーを応用した土壌微生物診断装置の開発に成功し特許を取得。従来の土壌生物性診断より分析期間の短縮、コストの大幅な低減を実現した。
現在はその特許技術を譲り受け独立し、「土壌のお医者さん」として、当分析技術を通じ肥料資材メーカーへの微生物診断による分析評価や、生産農家に対する土づくりの的確なアドバイス・コンサルテイングを提供している。
最新知見では、土壌微生物が人体の腸内細菌叢との関係性が明らかにされ、炭素貯留や災害後の土壌回復など気候変動対策などの分野でも注目を集めており、当技術がヘルスケアにおける人々のウェルビーイングや社会課題解決に貢献できるよう活動している。


【会社沿革】
2002年から産学官連携による技術開発





<特許取得・製品モデル製造>
2012年:事業中断
2021年4月1日:会社設立・事業開始
2022年から佐賀県のStart upの支援
2024年:新装置稼働・特許出願

【会社概要】
社名:合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会(SDB研)
本社所在地:〒848-0122 佐賀県伊万里市黒川町福田745-1
代表:橋本 好弘
事業内容: 畑の病害発生抑止力評価、水田の地力診断、根の活力評価、資材の委託試験、営農指導・勉強会
設立: 2021年4月1日
HP:https://soil-biosensor.jp 

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