佐賀・吉野ヶ里町の古くからの水源を歩きながら歴史を学ぶ「蛤(はまぐり)水道ウォーク」が5月14日に開かれた。主催は町内のまちづくり団体「吉野ケ里町観光みらい会議」。
江戸時代初期の佐賀藩家老だった成富兵庫茂安が、現在の同町を流れる田手川流域の夏の水不足を補うために上流の水源に当たる蛤岳(はまぐりだけ)に「井出」と呼ばれるダムを作り、山の斜面に沿って1260メートルにわたり水路を回し、田出川の上流、坂本川へとつないだ「蛤水道」。水道の途中数カ所には、水の勢いを削(そ)いで調節するための「野越(のこし)」が設けられ、余分な水は谷を流れる那阿川へと落ちる仕組みが造られている。これら当時の高度な土木技術は「土木学会選奨土木遺産」に指定されている。
町が2007年3月に作成した「観光戦略計画」に基づいて、この戦略を町民主導で進めるために商工会や婦人会、市民らが中心となり2011年4月に同会議を立ち上げ、町の将来像や活性化に向けたアイデアなどを議論する中で、今回のイベントも企画した。本年度中には観光協会を設立しようと準備を進めているという。
同イベントには予定より多い約40人が集まり、参加者は歴史と自然を楽しみながら約3キロを歩いた。集合場所の山祇(やまずみ)神社では、移動作業を終えた県天然記念物の御神木「小川内(おがわち)の杉」も間近で見ることができた。ウオークの終了後、地元の食材で作ったシシ汁が振る舞われた。
ガイドを務めた同町商工観光課課長の多伊良豊剛さんによると、このイベントは治水の神様として知られる成富兵庫たたえる式典「兵庫祭」のころに開催しているという。鳥栖市から参加した夫婦は「蛤水道には興味があったが、これまで機会に恵まれず、今回が初参加となった。天候にも恵まれ水源を身近に感じることができ楽しかった」と喜んでいた。