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新型コロナの影響受けた飲食店を繋いだ佐賀のテークアウト情報サイト「トリモテ」のこれから

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「佐賀のテイクアウトなら『トリモテ』」中心となって運営してきた「イタリア酒場 キングキッチン(King Kitchen)」の江口裕太さん

 「当店でも1日当たり1万円~1万5,000円のテークアウトの注文をもらっている。通常営業とは比較にならないが、この注文がありがたく、家賃や光熱費などの固定費を賄え、マイナスからスタート地点に立てた気持ち。」

 この語ったのは4月上旬。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、佐賀県内に相次いで開設されたテークアウト情報サイトの1つで県内最大の掲載店舗数となった「佐賀のテイクアウトなら『トリモテ』」を、中心となって運営する「イタリア酒場 キングキッチン(King Kitchen)」の江口裕太さんが、佐賀経済新聞ヘッドラインニュースの取材の中でコメントされたもの。コロナ前には歓送迎会や結婚式2次会での利用も多かった店舗が、コロナによって飲食店が大変厳しくなっているということを改めて実感させられ、大変印象深かった。

 緊急事態宣言が解除され、都道府県をまたぐ移動の自粛が緩和され、人の動きが戻りつつあるように見える6月下旬。「トリモテ」で中心となって活動した江口さんに、その後の「トリモテ」の動向とこれからについて、お話を伺った。

「佐賀のテイクアウトなら『トリモテ』」トップページ

 新型コロナウイルス感染症拡大が全国に広がった3月。「トリモテ」のヘッドラインニュース取材時に江口さんに伺ったところによると、歓送迎会時期に予約のキャンセルが始まったのは佐賀でも例外ではなく、4月の政府による緊急事態宣言の発令で、店舗での飲食利用がさらに減り、来店がほぼなくなった店舗が多数だったと考えられる。

 この状況の中、佐賀県内でも4月以降、飲食店のテークアウト情報を発信するホームページやSNSで発信するものなど20以上開設。その中で、200を超えるテークアウトや宅配可能な飲食店情報を掲載し、県内最大のサイトとなった「佐賀のテイクアウトなら『トリモテ』」。佐賀弁で「『トリ』くっばい、『モッテ』くばい」から取ったこのサイトは、佐賀商工会議所青年部で本年、経済交流委員会委員長を務める江口さんをはじめ、同じく青年部でホームページ制作会社を経営するメンバーなどの有志がボランティアで情報収集と制作。開設直後は、コロナ禍による変化が大きい中で、参加飲食店と日々の飲食を楽しむ利用者を繋ぐ大きな拠り所となった。

 佐賀のテークアウト情報サイトからスタートした「トリモテ」。江口さんによると、参加店の中にはテークアウトをきっかけに営業自粛解除後の新規来店に繋げている店舗もあったという。テークアウト利用者との新たな接点を作るために、複数店のラインアップから選べるようにと、5月から唐人町と白山の2カ所に直売店を開設。江口さんから経営する「キングキッチン」は白山店として、毎日11時~18時に、約15店舗から持ち込まれた弁当を、現在も販売している。江口さんは「落ち込んだ売上をカバーするために始めたテークアウトだったが、店舗が連携して接点を増やすことで新たな飲食店の認知につながることが利点になった。また、複数店のメニューを組み合わせたコラボ弁当に取り組む店舗もあった。もちろん事情に合わせてテークアウトを終了した店舗もある」と話す。

参加店舗から持ち込まれた多数の弁当が並ぶ「トリモテ」直売所白山店

 6月に入り、佐賀市中心街でも焼き鳥店、焼肉店、居酒屋などでは、3~4人程度の少人数の予約や来店が始まり、江口さんの店舗でも6月12日に5~10人程度の予約が入り、6月末にかけて最大で20人程度の予約が入り始めているという。特に企業名で予約が入り始めていることが江口さんにとってトピックと捉えており、佐賀県が新型コロナ対策の一環として5月下旬から6月上旬に実施した飲食店前の歩道にオープンテラスを設置する社会実験「SAGAナイトテラスチャレンジ」などを通じて、飲食店利用を通じて地元経済回復への意識を感じているという。

 「トリモテ」では現在、第3弾企画として、応援プロジェクトの準備を進めている。政府が推進する「新しい生活様式」における飲食ルールに基づき、佐賀の食材を使用しメニューに表記した料理とドリンク2時間飲み放題を税込み5,000円で提供するコースを参加店が一斉に実施する。準備が整い次第、展開を始めるという。

 江口さんは「コロナが落ち着いたとしても、今後、当面は例えば100人に迫る規模の予約は少なくなり、大きい予約でも10人~30人の規模のものが主流になるかもしれない。席数の大きい店はどうやって収益を上げていくかが課題になってくる」と話す。

「イタリア酒場 キングキッチン(King Kitchen)」店内

 最後に江口さんは「中心街に飲食店や商店が並んでいたものの、これまでは自分の店舗の儲けだけを意識していたかもしれない。今回、苦しい中で立ち上げた「トリモテ」だったが、ライバルである同業飲食店が共に盛り上げ、各店の売り上げに繋げていくという意識を改めて持つことが出来た。厳しい意見や批判をいただくこともあったが、対コロナで一致団結できたことは今後への可能性を広げたと思う。今後、テークアウトの情報提供のニーズは無くならないけど落ち着いてくることから、これからは、例えば地元企業間をとりもつサイトへ進化させるなど、飲食店側が何らかの形でお返しをしていきたい」と話す。

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佐賀商工会議所青年部有志がテークアウト情報 協力の輪に「固定費賄えありがたい」(2020年4月14日配信記事)
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【関連ページ】
「佐賀のテイクアウトなら『トリモテ』」

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