提供:Rethink Creator PROJECT 制作:佐賀経済新聞編集部
地元クリエイターを発掘・支援するイベント「Rethink Creator PROJECT」の佐賀セミナーが10月10日、佐賀駅前の「サンシティ レンタル会議室」(佐賀市神野東2丁目)で開催されました。
「Rethink Creator PROJECT」は、これからの地域に必要な「自ら考え、発信することができるクリエイター」を“学び”と“挑戦”を通して日本中に創出していくプロジェクト。プロジェクトのキーワードは「Rethink」。Rethinkとは身近なことについて少しだけ視点を変えて考えることで、日常の中にある魅力を再発見することです。そして「Rethink Creator」は、そんな身近な暮らしの中にある魅力を見つけ、それをクリエイティブで発信できる人のことです。そして様々な地域のRethink Creatorたちがそれぞれの「地域」「文化」「暮らし」にあった発想を、自分たちの力で生み出し発信していくことで、持続可能な地方活性化の未来を実現していきます。
2018(平成30)年にスタートした同プロジェクト。主催は、クリエイター育成や仕事のマッチングを行うクリエイターズマッチ(東京都渋谷区)。JT(東京都港区)が地域社会への貢献活動の総称として展開する「Rethink PROJECT」と、JTBとのコラボで実施。全国各地で開く無料セミナーを「学びの場」、誰でも応募可能なコンテストを「挑戦の場」と位置付けて展開しています。
4年目となる今年は、6月2日の徳島会場を皮切りに全国17地域で実施。コロナ禍に対応するために、リアルの会場に加え、オンラインでも同時配信するハイブリット形式で行われました。初開催となった佐賀会場での実施には、佐賀県が後援。リアル会場に約10人、オンラインで約20人が参加しました。
後援の佐賀県からは、政策チームさがデザイン担当の森岡貴之さんからのご挨拶で、「『さがデザイン』の部署では、まさに今回のテーマである『Rethink=視点を変えて考える』を取り入れ、外部の専門家と協力し、行政の施策をクリエイティブに発信していており、今日のセミナーは我々も勉強になると思い楽しみにしています」とのお話しがありました。
佐賀県政策チームさがデザイン担当の森岡貴之さん
講師は、「アンティー・ファクトリー」(東京都渋谷区)社長でブランドコンサルタントなどを手掛けるアートディレクターの中川直樹さん、佐賀市在住のデザイナー・イラストレーターのシオタアヤカさんが登壇しました。
セミナーは、30分の「Rethink講座」を受講後、参加者が考えたコピーを元にポスターを制作する90分の「Createワークショップ」で構成。Rethink講座では、「地域の魅力を好きになってもらうために」を目標に、「Rethink=視点を変えて考える」ための3つの方法、「属性を見る(フィルター)」「内側を見る(インサイト)」「印象を見る(カプタ)」について説明されました。
オンライン参加者からはチャットでコメントが寄せられました
「Rethink」は、日常の中にある魅力を再発見すること。身近にあって、改めて注目する機会が少ないものこそ、多くの人にとって価値のある「気づき」がたくさん隠れているはずです。1つ目の「属性を見る」では、伝えたい「相手」や「物事」を決めて探すことで、今まで気づかなかった魅力が見えてくることを指します。講座では、「自然や巨木が好きな関東在住の知人に『川古の大楠』を伝える」ように、「特定の誰か」をイメージし、その人に地元の「何を」伝えるかを絞り込むと、地域の魅力がはっきりと見えてくることを共有しました。
2つ目の「内側を見る」では、伝えたい相手に寄り添うことで、「こういうことを伝えてあげたら喜んでもらえそう」などの内側まで見えてくることを指します。講座では、「自然や巨木が好きな関東在住の知人に、全国最大級の巨木を見て感動してほしいから『川古の大楠』を伝えたい」と例示し理由やメッセージが見えてくることが、情報発信のコミュニケーションの方向性となることを確認しました。
3つ目の「印象を見る」では、伝えたい情報には「データ(正確で硬い情報)」と「カプタ(自由で柔らかい情報)」の2種類があり、カプタ情報を意識することで素敵なメッセージが見えてきます。講座では、「自然や巨木が好きな関東在住の知人に、全国最大級の巨木を見て感動してほしいから『川古の大楠』を伝えたい」ためのカプタ情報として「パワースポット」「貫禄」「雄大」「自然の香り」「生命力」というキーワードを浮かべ、「弥生時代から生きる巨大樹 一度は会いたい巨人」とカプタで伝える例を示しました
後半のCreateワークショップでは、前半の「Rethink講座」で学んだことを活かし、佐賀県内で撮られた2枚の写真を使ってキャッチコピーを考え、地元の魅力を伝える実践に取り組みました。写真は、太良町沿いの有明海にそびえる「大魚神社の海中鳥居」(太良町)と唐津の港町の名産が高速回転するという異彩を放つ光景「呼子のいかぐるぐる」の2枚。ステップ1で、「フィルター」を通して「伝えたい相手」を意識。ステップ2で、写真から感じられる「カプタ」をたくさん見つける。ステップ3で、「インサイト」に寄り添う「キャッチコピー」を作るという流れで、順にアイデアを提出。決まったコピーをシオタさんがポスターデザインに仕上げていきます。
オンライン参加者からも寄せられるアイデアをスタッフがまとめます
参加者から寄せられた多くのアイデアの中から、「伝えたい相手」「カプタ」「キャッチコピー」を順に決めていきます。「大魚神社の海中鳥居」では、「伝えたい相手」を「厄を落としたい人 最近ついてない友人 厄年40代」に決め、写真から導き出されるカプタを出し合います。そして、集まったカプタを元にキャッチコピー案を出し合った結果、「あなたの願い 聞きますよ」に決まりました。「呼子のいかぐるぐる」では、「伝えたい相手」を「海鮮をたべれない(苦手な)3歳の息子」に決め、カプタ、キャッチコピー案を出し合った結果、「ひらひら パタパタ とんでイカなーい」に決まりました。決まったキャッチコピーを写真に合わせる際に、縦書きにするか横書きにするか、文字を明朝体にするかゴシック体にするかを参加者が決め、シオタさんがポスターに仕上げました。
ワークショップの最後に、中川さんは「地元の人が『誰に伝えたいか』をきちんと決めた上で、カプタ情報を想像してもらうことによって、誰もが魅力的なコピーを作ることができますし、地域の魅力発信に繋がるポスターにできることが分かったのではないか」と締めくくりました。シオタさんは「皆さん、この短時間の中で面白いコピーをたくさん考えてもらえたので、選ぶのが大変だったけど、デザインしていて楽しかったです。コピーは、ものごとの本質を考えて作るものなので、深掘りすることは皆さんでもできることなので、これからもチャレンジしてほしい」とコメントしました。
「アンティー・ファクトリー」中川直樹さん
なんとなくの「佐賀」ではなく、地元の人が伝えたい相手に合わせてピンポイントで発信することで、佐賀のことをさらに理解してもらえる機会が増えると思います。私も実際に、佐賀県内を周り、「唐津の寿司」や「呼子のイカ」、「伊万里の棚田」や「武雄の大楠」など体験すべきモノがたくさんありました。普段の皆さんが視点を変えて考えるとより面白いコピーが出来ると思います。今回のセミナーで皆さんが考えたコピーも良いものが多かったです。
シオタアヤカさん
今回のセミナーのコンテンツを作りながら、佐賀に住んでいても知ったつもりになっていて、改めて「今度行ってみよう」と思う機会になりました。セミナー中の短い時間で参加者から面白いカプタやコピーが出てきたので、今後も普段から今回のようなコピーワークをしてもらえれば、佐賀がもっと面白くなると思います。
「クリエイターズマッチ」呉京樹社長
積極的に参加される方が多く、座学からワークショップ=アウトプットがスムーズに進行できた。「実際にクリエイティブの仕事をされている方も参加されているのでは」と思うほど、佐賀らしいポスターデザインができ、後援いただいた佐賀県からも「ポスターを活用したい」とコメントもらいました。「デザイン=ハードルが高い」というイメージがあるが、コピーを考えることはユーザーに寄り添うことで、「人に伝えることが楽しい」と思うきっかけになればと考えています。
今年も昨年に続き、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて、オンラインのみ、もしくは、リアルとオンラインのハイブリッドなど臨機応変に開催方法を対応してきた。毎回オペレーション方法が変わる中、オンライン参加の方に音声がうまく届かないなどあったが、各地のセミナーを通じて良い作品が出来たと思っています。「Withコロナ」の中で、今後、テーマや新たな進め方を考える機会になっていると思うが、「地元のことを知っている人が視点を変えて伝えることで人の心を動かす」という軸をもとに、これからも、街を元気に、経済を元気にしていくプロジェクトとして続けていきたいです。
JT 渉外企画室・一ノ瀬亮さん
今回の佐賀セミナーも多くの方に積極的に参加してもらえ嬉しく思います。中川さんとシオタさんの掛け合いも面白く、地元の魅力を発信する方法について有意義に学べたのではないかと思っています。
「視点を変えれば、世の中は変わる。」をコンセプトにさまざまな社会課題と向きあう「Rethink PROJECT」の一環として、「地元を誰かにまかせない」をテーマに、自分の地元のことをひとりひとりが考える「Rethink Creator PROJECT」。初の佐賀セミナーに後援をいただいた佐賀県や弊社の佐賀支店と連携し、次年度以降も地元に寄り添った取り組みを続けていきたいです。
「Rethink Creator PROJECT」では、セミナーで学んだことを活かす挑戦の場となるコンテスト「Rethink Creative Contest(リシンク クリエイティブ コンテスト)」を今年も開催いたしました。新型コロナウイルス感染症の影響で、これまで当たり前だった日常が当たり前でなくなっていることから、このコンテストでは、1日も早い日常の復旧と、地元を中心に多くの人が楽しい時間を過ごせることを願って、「当たり前の大切さや魅力」を発信するポスターを広く募集するもので、「Rethink PROJECT賞(最優秀賞)」などに選ばれた人には賞金・ギフト券を贈呈します。今年度の募集期間は終了しました(10月17日まで)が、来年度、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。また、公式ウェブサイトでは「学びの場」として動画のデザインカリキュラムも無料公開しています。「Rethink:情報編集」と「Create:デザイン」を約5時間の講座を通して学べ、受講後には「Rethink Creator」になるための道筋が見えてくるはずです。ぜひ参考にしてみてください。